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Sang-Chul Leeさん(上)と聴衆風景 |
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緑園都市コミュニティー協会(RCA)国際交流委員会主催の第89回トークサロンが5月28日(土)緑園クラブハウスで開かれた。ゲストは海外留学、語学研修を業務とするEF
Education First Japanのサンチョリ・リー(Sang-Chul Lee)社長。祖父が大使経験のある韓国の外交官であり、グローバルに家族が活動する中でリー社長は生まれも育ちもスエーデンの韓国系スエーデン人。スエーデン語はもとより、英語、フランス語、韓国語、中国語、日本語に精通している。見事な日本語で北欧の美しく高福祉の国と一般的に日本人に考えられているスエーデンの様子を語ってくれた。
スエーデンは人口900万人で日本の人口の14分の1ほど。日本からはデンマーク乗換えの飛行機で14時間ほどかかる。冬は午前9時か10時にならないと明るくならず、午後は3時ごろには暗くなるので、仕事場に着くころ明るくなって仕事が終わると暗くなる状況。そのため、冬は本当に暗く寒いと感じられるので、かなりしんどいそうだ。
スエーデン発祥のグローバル企業は携帯ネットワークのERICSSON、家具のIKEA、自動車のVOLVO、航空機のSAABなどがあり、スエーデン人の発明品としてはノーベル賞で有名なアルフレッド・ノーベルのダイナマイト、自動車で誰もが使っている3点式シートベルト、締め具のZipper、紙の容器で液体を持ち運ぶことを可能にしたテトラパックなど豊富だ。
よく知られている高福祉については、教育、医療は無料、そして産休は父母併せて18カ月間取得でき、その間給料の8割が支給される。一方それを実現するための税金は所得300万円以下は3割、300万円以上は55%と高額だ。生活の質素な階層には魅力的な社会であっても、大企業などの高所得層が逃出していくようでは社会が成り立たなくなるので、並々ならぬ努力で大企業に仕立て上げ、雇用を生み出した会社は子供に企業を相続させる場合、相続税はゼロとのこと。例外を作って企業を優遇し、社会の活力を維持しようとしている。
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会場風景 |
高福祉で必ずしも良くないのは、患者サイドではコストが分らないまま(無関心のうちに)、税金で医療が賄われている。また、日本ではわずか1.5%の移民がスエーデンでは17.3%にのぼる。子供の出生率が落ちても、労働力が確保できるなどのメリットはあるが、移民が固まって住んだり、かたくなに宗教に固執するなどして、排他的になり、トラブルになる危険性もはらんでいる。
日本を旅したスエーデン人に共通して認識されていることは、日本では治安がいいこと、親切でお客さん扱いをよくしてくれる、タクシーでカメラを置き忘れても、ホテルに届けてくれるなど、優しい行為が普通に行われていて、日本人の信頼性につながっている。
最初はIKEAの日本支社立上げで6年前に来日してから、日本をこよなく愛しているリー社長は、世界が今後も成長していく中で、日本だけ国内で充足してチャレンジ精神に欠ける社会になってしまうのはとても寂しいと感じており、日本をいかに世界に向けて『売り込む』か、道を探ってほしいと語る。
日本は安全で、国全体として上手く動いている事を(特に外国との比較において)もっと日本人は認識すべきで、且つ、誇ってよい。平均の遅れはたったの30秒という新幹線技術を世界に売っていくのも、東日本大震災のあと、政府が外国のプレスに対して、なんら発表を行わないため、各国が勝手に根拠のない記事を書いてしまったりするのを防ぐのも、全てコミュニケーションスキルを磨くことから始まる。
日本と日本の若い人たちが元気になるためには、外国に出ていくチャレンジ精神、失敗してもいいという気持ちの持ち方、絶対やるぞというハングリーな気持ちを持っていることが大事。海外に事務所を開こうとした場合、スエーデンでは従業員の半数は、その土地の言葉が出来ずとも経験を積む事が出来るとの思いで積極的に手を上げ手を上げる。それに反し日本では誰も手を上げない。
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スピーチを真剣に聴く人たち |
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日本の米国への留学生数は現在2000年レベルの半数にまで落ち込み、一方で中国・韓国は2.3倍、1.8倍とそれぞれ伸ばしている。ハーバード大への日本人留学生は15年前に15人だったが、去年はたったの1人になってしまっている。
“Take a leap. Take a risk.” という多少の危険を冒しても前に踏み出せというメッセージを伝えることが肝心。日本人ではないけれど、日本が好きというリー社長のメッセージを熱く受け止めたい。
スエーデン人は余り自分を見せびらかせないというように日本人は似ている点が多い。スエーデン人が中国、韓国に駐在した場合、任期が終わればそれなりに楽しかったでスエーデンに帰っていくが、日本に駐在した場合、会社を変えてでも日本に居残りたいと言
う人が多い。スエーデンは社会的に男女の差がないが、日本は少しは変わってきているがまだ男社会、といった日本の印象を語っていた。
スピーチ終了後のQ&Aセッションもとどまることなく質問が寄せられ、遠い北欧の国スエーデンに関心がとても高いことが伺われた。最後に、スエーデンを訪問予定のトークサロン参加者にストックホルムの見所はと聞かれて、ストックホルム市は30,000もの島を含めた都市で、船での島めぐりも良いアイデアではないかとのこと。
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