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緑園国際交流 トークサロン No.143
モロッコ 文明の土地 
Jun.22.2019
 、
 
   モロッコ王国主張の国土
 (西サハラを含めること)
 梅雨の真只中で時折降る雨のなか、モロッコ王国大使館の経済担当参事官ハジャール・エッザヘルさんをスピーカーに迎えてトークサロンを開催しました。エッザヘルさんによる概要説明に続いて、自ら作成したアラガンオイルのビデオを含めビデオを2本映写、さらに活発な質疑応答など、穏やかさが忍ばれるスピーカーの人柄もあり、終始和やかな雰囲気に包まれた1時間半でした。あいにくの天候にもかかわらず参加者は31名と盛況で、うち5名がモロッコに行かれた経験があった方々。
 
  最大都市カサブランカは、俳優ハンフリー・ボガード、女優イングリッド・バーグマン主演映画「カサブランカ」(1942年、ワーナーブラザーズ配給)の舞台でもあり、オールドファンにはなつかしい名前でもありました。モロッコはアラブ諸国の一つで砂漠の印象が強いためか、参加者には水量や水利に関心が高かったようですが、11~12月の雨期には少ないながらも雨期であり、アトラス山脈の頂上付近には積雪があるとのことでした。

*モロッコの基本データ
   
-国土は、アフリカ大陸北西部に位置し、海岸頭部は地中海、海岸西部は大
 西洋に面しており、総人口は約33.6百万人。ヨーロッパ大陸には、港湾都
 市タンジールかた対岸のスペインまでフェリーで、わずか1時間程度の至
 近距離にある。

-首都はラバト。ただし、ラバトは行政首都と位置づけられ、今やアフリカ
 の金融センターである最大都市カサブランカは 経済首都と位置づけられ
 ている。カサブランカはモロッコ最大都市かつ経済活動が活発であり、国
 際的な知名度ではカサブランカがはるかに上回っている。


-政治体制は立憲君主体制、公用語はアラビア語とアマズィク語(ベルベル語の一種)であり、フランス語は広く使われて
 いる。
-国土を貫くアトラス山脈より北は地中海性気候と一部ステップ気候であるが、他の広い範囲に砂漠が広がって
いる。 年間
 降水量は400ml程度で、全体として乾燥した気候である。

モロッコはその位置関係から、マグレブ〈=日の没する国〉と言われ、日本〈=出づる国〉とは好対照である。
現在、アフリカ初の高速列車が、北西部海岸沿岸を運行している。

*歴史・政治
17世紀から続くアラウィ王朝の23代目の立憲君主国。日本におけるような全くの象徴ではなく、王室の権限は強いも
 のの、民主化を指向した2011年の「アラブの春」の影響から、行政は政府に任せるとの気運の高まりもあり、従前よりは
 王室の権力は弱まっている。
   

*民族・宗教・言語
-先住民であるベルベル人が約30%とアラビア人が約70%を占める。ベルベ
 ル人は3種族あり、
それぞれ話し言葉と書き言葉が異なっている。
-宗教は、スンニ派のイスラム教徒がほとんどだが、キリスト教、ユダヤ教
 も共存している。

*教育

-フェス/FESという都市に、現存する最古の大学として知られるアルカラウ ィン大学(859年に女性によって設立)がある。モロッコでは、現在教育
 費は大学まで無償化されている。

*文化・芸能・食事
-伝統行事・習慣  
 モロッコと日本では形式が異なるものの、その習慣や作法等で意外に共通点が多いことが分かる。

・書道・習字/Arabic Calligraphy: アラビア文字で書いてはいるが、日本の墨に似た染料を用いており、日本の書道にも
 通じるものがある。

・茶道/Tea ceremony:ミントティーを日常的に愛飲しており、古式のしきたりに従った所作や手順は、日本の茶道に通じた
 ものがある。


・香炉/Incense Burner:香道という日本と同じ習慣があり、宗教的な意味と健康指向に沿うものでもある。
・手水揚(おちょうず)/The practice of Ablution:礼拝の前に手を清める習慣があり、来客の際にも、器具(ポット)によ
 り手洗いをサポートしている。


-モロッコ料理
・タジン/Tajin=Nabe は、紡錘型の独特な形状の鍋そのものを指すとともに、タジンで作る料理もタジンと呼ばれている。
 かつて日本でタジン鍋を使ったヘルシー料理がブームになったこともある。

・モロッコ料理は、日本料理同様、世界文化遺産に指定されている。

   

-履物
・バブーシュ/Babouch という伝統的な履物(スリッパ・サンダル)があり
 、その伝統を絶やさないため、最近では若い人にも興味を引くような斬新
 でおしゃれなものも出てきている

-映画・祭り
・マラケシュ国際映画祭は有名で、2016年には塚本晋也監督が功労賞を受賞
 した。 

・セフルー/ Sefrou(国のほぼ中央に位置)では、毎年、ユネスコの世界文
 化遺産に登録されている
「さくら祭り」が開催され“さくらの女王”が選
 出される。

*観光立国
-国土の中央をアトラス山脈が貫き、多様で豊かな景観を持つ。砂漠のイメージ強いが、山岳地帯には降雪もある。
-砂漠地帯では、テント体験、ラクダで旅行、ダンス、歌など様々なアトラクションがある。映画の背景に使われることも
 多く、ミッションインポシブルの撮影も行われた。


-年間の観光客は約12百万人、国内には、トラディショナル・モダーンそれぞれの高級ホテルがたくさん存在する。特に
 「リヤド」と言われる、昔の王侯貴族の邸宅をホテルに改造したラグジュアリーホテルは人気が高い。

*ビデオ映写 (2本合計で15分)
-1本目は、モロッコの工芸品の紹介があった。
-2本目は、“モロッコの黄金”と呼ばれるアルガンオイルの紹介があった。女性たちのチームが孤立から脱却して平等な
 立場で、僅か小さな石2個でアルガンの実からアルガンオイルを製造している。果肉は家畜の餌に、種を轢いた後の絞り
 粕は牛の飼料として利用されている。アルガンの木の保護のため、毎年2030万本を植林し森の再生を図っている。

   

*主なQ&A  14:15-14:45
-アルガンオイルはどこで入手できるのかについて、大きな都市なら色々
 なブランドものがあるが、ハンドメイドなのでノーブランドでも品質の
 良いものがある。
 

-カサブランカは映画でも有名で、今でもイングリッド・バーグマンが強
 く印象に残っている。
タジン鍋は料理は簡単でヘルシーでもあり、日本
 でも流行った。今でも鍋を持っている。


-国旗のデザインの由来について、緑はイスラム、赤はパワーを表し、中央の5つ星はアラブ人が占領後のものであり、そ
 れ以前はユダヤ人に由来するダビデの星の形をしていた。

-マラケシュには毎日、屋台がたくさん出ていて、毎晩お祭りのようである。

   
   モロッコ国旗

-乾燥地帯の多い国土における水資源の確保については、灌漑設備や水路の充実および河川のダム
 建設等により、水資源を有効に活用している。11月~12月は、降水量自体はさほど多くないもの
 の、雨期となっている。


-国際収支のバランスについて、モロッコは観光・サービス産業が盛んであり、収支は均衡してい
 る。
モロッコから日本への輸出は欧州に次いで多く、野菜(トマト、ジャガイモ)、果物(オリ
 ーブ、メロン)、海産物(マグロ、タコ、イカ) 、穀物(麦)などが日本に輸出されている。


-日本料理を食べる機会については、都市部には日本料理店が約60店舗あるが、日本大使館には
 日本人シェフがいる「囲炉裏」のみを日本食のレストランとして認めている。


-モロッコの主な課題について、国民の約3割が30歳以下の若い国であるが、失業率がやや高いことや若い優秀な人材が
 ヨーロッパ、主にフランス語圏(フランス、ベルギー、スイス)に流出する傾向がある。

*最後に参加者から希望者を募り、ハジャール・エッザヘル氏を囲み、集合写真を撮って閉会となりました。14:50-15:00
 ありがとうございました!