緑園都市コミュニティ協会(RCA)の国際交流ト―クサロン第160回が1月25日(土)緑園クラブハウスで開催されました。スピーカーはドミニカ共和国大使館の貿易・投資・経済担当参事官 エマヌエル・グスマンさん。日本に赴任され3年となり、日本語も大変上手とのことでしたが、スペイン語での講演でした。大使秘書の山本昌代さんに通訳をしていただきました。
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これから始めます。 |
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【事本情報】
国の基本情報、歴史、文化、スポーツ、経済、観光 と幅広く、今日のRCA講演のために作成されたパワーポイントとダンス場面では動画も入れながら、詳しく紹介してくれました。
同国の面積は48,442㎢で九州の1.3倍、北海道の58%程度の広さで、人口は1,076万人(2023統計)。
メキシコ湾の南、大西洋に隣接するカリブ湾に浮かぶイスパニョーラ島の東側 3分の2を占める国で、首都はサントドミンゴでユネスコ世界遺産に登録されている。
同島の西隣はハイチ共和国です。公用語はスペイン語、宗教はカトリック。混血73%・ヨーロッパ系16%・アフリカ系11%。政体は立憲共和制、元首は大統領。
カリブ海ではキューバに次ぐ大きい島。ドミニカ共和国には三つの山脈とその間に位置する最も肥沃なシバオ平野など四つの平野がある。各山脈の谷間には91メートルの壮大な滝などが多い。標高マイナス40mの塩湖エンリキージョ湖など55の湖が。各山脈から湖や海岸に向かって流れる多数の中小河川がある。いずれの河川も農業用水や生活用水として使われる。最高峰はドゥアルテ峰 (3175m)で、カリブ海諸国での最高峰。気候は亜熱帯に属す。首都サントドミンゴの年間平均気温は26℃前後。湿度は約80%と高温多湿。北半球にあるため、雨季は夏季(5月から11月)であり、6月から11月はハリケーンが飛来。
【歴史;すべてが始まった場所】
アメリカ、スペインと深い歴史あり。日本政府とも友好的関係にある。
1492年、コロンブスが到着。コロンブスが一度はジパングと認めた場所も(諸説あり)。コロンブス到着後、スペイン人も到着。建築や習慣が根付く。現在も、そのころの文化、食事の影響が残る。16世紀にコロンブス2度目の航海の際に受けた影響も大きい。建築業においては、コロンブスの時代に受けた影響が、とりわけ大きい。
500年以上前から、フランス、イギリスからのコンタクトがあり、近年ではアメリカが有力。 いずれにしても、様々な文化が入交ってベースとなっている。様々な国にテリトリーを狙われるが、要塞を築き、外敵を防いできた歴史があります。
【野球の歴史】
野球は国技となっている。幼少期から自然と野球に触れる環境で、アメリカ大リーグで活躍する自国選手も多く、ファン・ソト選手は大リーグ最高年俸での契約と言われています。日本人では筒香嘉智選手(横浜DNAベイスターズ)は当国への野球留学経験あり、私(エマヌエル・グスマン参事官)にとって、横浜スタジアムは思い入れある球場の一つ、とのこと。
【文化の特徴と取り組み」
バチャータという踊りのリズムがユネスコ無形文化遺産に登録されました。ビデオで紹介・観賞。参事官の予想以上に日本人に関心があるようで、とても驚かれた、とのこと。メレンゲというリズムも存在し、同じく無形文化遺産に登録されており、どちらもドミニカ共和国発祥で、文化を反映したリズムと言える。
使用する楽器は、諸国発祥、様々な文化の融合が感じられます。
食に関しても様々な文化が反映されています。代表作を抜粋
・サンコーチョ 日本で言うスープ。自然古来の野菜とスパイス。お祝いや集まりなどの行事で振舞われる。
・マングー:緑色のバナナをマッシュ状にし卵など付け合わせとともにいただく朝食の定番
・エンバナーダ:中南米では様々な国で存在。ドミニカ共和国国内だけでも、様々な大きさと味の種類が点在する。
・その他定番料理:緑色のバナナとポークで作るメインディッシュ。魚・米・緑色バナナのフライを揃えたおかず。
【経済の特徴と取り組み】
ここ20年間、著しく成長を続ける国。2020年パンデミック以降も成長を続けてきた。2024年は前年比5.1%の成長と囁かれている。様々な企業にも注目され、政治的安定の基盤が経済の好調維持の要因。
【現在進む経済成長要素】
・建築
フリーゾーン(海外企業が投資して自由に使えるゾーン)
日本企業もワコールの生産拠店、広島東洋カープはアカデミー開催。
・新しいホテルの建設、開業
映画の撮影場もあり、季節を感じられる撮影が通年行われている。一つの場所で、異なる気候を撮影できることで、大変注目を集めている。
ゴルフ場も観光客誘致に有効で、世界的大会の開催地にもなり得る。
【商業の特徴と取り組み~海外諸国とのグローバルな繋がり~】
各国と様々な協定を結んでいる。世界的に7つの商業協定があり、ドミニカ共和国を通るルートやドミニカ共和国を介した商売を考慮すると、10億人のマーケットがあると言える。
アメリカとも経済協定を2つ締結。EUは27か国と協定を結び、イギリスとも別途締結。
こうした経済的背景にも歴史が反映されている。アメリカ、ヨーロッパに住むドミニカ人も多く、彼らの働きかけによって友好的な経済関係が結べている。
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飛行機のみならず、航路での交流も盛ん。クルーズ船のターミナルが3港。ドミニカ共和国からカリブ海諸国への移動もアクセス良く、カリブ海全体を楽しむ拠店となり得る。
【現在取り組んでいる主要プロジェクト】
・葉巻:大切な輸出商品で、日本にも大量輸送。
・カカオ、バナナ:北米を中心に輸出
・医療機器:フリーゾーンにおける取組み。輸出に至るまでの一連の流れをドミニカ共和国で実施
・将来的に日本への輸出を期待する商材も多数。これからの貿易拡大に期待したい。
【課題と方針】
・投資やフリーゾーンの利用、再生エネルギーなどのプロジェクトにも積極的で、法令を整 えている最中。
・人材不足に対しては、若者が多いという特徴を活かし、人財の一人として教育し経済を担 ってもらっている。
・温暖化は注目している課題の一つで、ソーラー、風力など様々な別の方法で再生エネルギ ー利用の方向性にある。
【結論】
ドミニカ共和国は、安定した経済、多様な産業、優れた接続性、豊富な観光資源、魅力的投資先であり、ビジネスパートナーです。
講演も終了し、参加者からの質問時間となりました。皆さんからの活発な意見に対し、それぞれ回答をいただきました。
【質疑応答】
Q. 国旗の意味は?
A. 赤は先祖が独立のために流した血の色、白は平和、青はビーチや空を意味します。
Q. 碧いバナナがよく食卓に並ぶとのことだが、黄色いバナナは?
A. 黄色いバナナはフルーツとして頂きます。もちろん生産、輸出国としても有名です。
食事に青いバナナを頂く傾向にあります。熟れる前の物ではなく別の品種で、熱を通してから食します。
Q. 小さな島の中における歴史は?
A. 3分の1がハイチ、3分の2がドミニカ共和国とされています。エスパニョーラ島は様々な国に狙われた歴史があります。その中でフランスとスペインによる交渉があります。奥が深いため、今回は簡潔な回答でご勘弁ください。植民地化の際に奴隷が連れて来られて労働力とされた背景は認識しています。1801年にハイチが建国され、その頃にはネイティブな人種は存在せず、フランスによる新国家設立の歴史が始まったと言われています。アフリカ系の奴隷の方々とハイチ在住のフランス系の方々が現在の領土編成にしたと思われます。その後スペイン人が自国領としてドミニカ共和国の成長を目指したという理解です。ここではお話しし切れない背景があります。そのためハイチではフランス語が語源、ドミニカ共和国ではスペイン語がそのまま主要言語とされています。
Q. アメリカのトランプ大統領就任による影響と対処は?
A. アメリカとは政治的に大変良い関係を維持しています。現状でドミニカ共和国が名指しにされた場面は確認していないので前向きに捉えています。ホワイトハウスの状況を見ながらにはなりますが、トランプ政権下の舵取りは慎重に見守る所存です。
Q. 家庭の様子や教育の特徴は?
A. 教育に男女差はなく、健康や人種に関しても同じく平等な権利を持っています。カトリックの方が多い国ですので、その考えに基づく家庭教育が垣間見られます。子供の人数は各家族2〜3人が平均、昔は10人以上兄弟がいる家庭も見られましたが、少子化が進んでいると感じます。
Q.再生エネルギー使用による海外諸国との競争の影響は?
A. 主要のセクターが国内で分かれており、海外企業からの投資は出来ません。例えば中国は現状立ち入り出来ないこととなっており、影響は受けておりません
Q. ドミニカ観光に最適な季節は?
A. 1〜3月が暑すぎず適切かと思います。より暑い時期がお好きな方はお好みに合わせて頂ければと思います。日本からの航空路はニューヨークかメキシコ経由が主流です。
Q. 全体的な治安は?
A. 観光を主とした国なのでシステム上比較的安全ですが、日本ほど安心出来る国は少ないと感じます。但し、少しでも危険が危惧される所には近づかないようお願いします。
Q. 政治の特徴は?
A. 日本同様に三権分立、大統領制を取っています。
Q. ドミニカ人の日本への興味は?
A. 日本食レストランが増え、日本のアニメが好きだという若者も増加しているように思います。
Q. 戦後日本を助けてくれた当時のドミニカ共和国大統領に感謝申し上げたい
A. ありがとうございます。特に日本との外交に力を入れていた大統領です。現在の関係があるのはこうした歴史のおかげかと思います。
Q. 参事官が想う日本の長所と短所、今後の外交に望むものは?
A. 良い所が多い印象で平和で静かな部分が個人的には好きです。遊びに行く所も多く、食事も文化も素晴らしいです。唯一ネガティブなのは物理的に遠いと感じてしまう位置関係にあることです。将来的にはお互いの友情を深め、任期中はこの友情を温めていき、より相互理解を深めたく、願わくば直行便が欲しく航空会社に直談判したこともあります。難しいことではありますが努めて参ります。
質疑応答も終わり、日本から遠く離れたカリブ海の国について歴史、文化、経済、商業など幅広い観点からご紹介頂き、第160回トークサロンは和やかで温かな拍手の中終幕しました。
今日は入り口の受付では「ドミニカ共和国」のカラー版の美しい紹介冊子を、また講演終了後には同国産の「フルーティカカオ」1ケースをお土産にいただきました。
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